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寝られないくらいの足の痛みの原因とは?

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どうも。ネコと一緒に寝ることだけが唯一のしあわせのきんたろうです。

 

 

睡眠って大事ですよねー。

 

それこそ、毎晩しっかりと睡眠をとれるからこそ、毎日の仕事を何とかこなすことができるわけですからね。

 

でも、人によっては何かしらの原因でなかなか寝付けないとか、眠りについてもすぐに目が覚めてしまう、なんて人もいたりします。

 

一日、二日だけの事だったらどうってことない事かもしれませんが、それが毎日続くとなると、当然、日常生活にまで影響を及ぼしてしまう事にもなりかねないでしょう。

 

 

 

今回はそんな患者さんのお話。

 

 

最近、転職したばかりの男性Kさん。

 

営業職という、今までに経験したことのない職種への転職のため、仕事に慣れるまでは色々と苦労しているようです。

 

 

そんなKさん。

仕事が終わって帰宅すると、ここ最近、必ず右のふくらはぎの何とも言えない重苦しい痛みが、それこそ朝まで続くそうです。

 

そのため、就寝してもなかなか眠りにつくことができず、眠ることができたとしてもすぐに目が覚めてしまうため、睡眠不足で仕事にも支障をきたしている、という事。

 

自分で足を揉んだりしても全く改善しないため、当院へ来院されました。

 

 

 

仕事が終わるのが遅いため、うちの接骨院で治療を開始したのが夜の九時過ぎ

 

いつもはこの時間くらいから足の痛みが出始めるらしく、問診をしながらベッドで横になっていると、「あー、きたきた…」と、徐々に足の苦しさが現れてきた事を訴え始めました。

 

こうなってしまうと、どんな体勢をとっていても痛みが治まらなくなってしまう、という事ですが、唯一、風呂に入っている時だけは痛みが和らぐ、との事。

 

なので、とりあえず患部をホットパックで暖めながら診断を進めていきます。

 

 

 

最初に立位で身体のバランスをみると、左側方に体が傾いているのが見受けられました。

 

それから、そのまま立位の状態で足部を診ると、中度から重度の扁平足が確認。

 

基本的に扁平足の人は、足部や下肢の構造的なバランスが崩れてしまう為に、ふくらはぎや足底の筋が極めて疲労しやすい状態になってしまっている事が多く見られます。

 

 

次に、仰向けの状態で下肢長を確認すると、左右の下肢の長さに大きな差が!

 

見かけ上の下肢長差では2㎝強でしたが、詳しく検査をしてみると、棘下長(上前腸骨棘→内果)で約3.5㎝、転子果長(大転子→外果)で約3㎝の左右差が確認されました。

 

下肢の骨折などの既往は無い、との事でしたので、おそらく成長期における骨の形成異常による脚長差ではないかと思われます。

 

 

普段、1㎝程度の脚長差がある患者さんはちょくちょく居ますけど、3㎝強くらいの脚長差となると正直、記憶にありません。

 

当然、日常生活における身体に対する負担は、相当に大きいと思われます。

 

 

また、見かけ上の脚長差と、棘下長・転子果長差とで1㎝程度の差異がありますが、これはおそらく、本来の3㎝強の脚長差を骨盤の歪みなどで代償している為だと思われます。

 

まぁ、3㎝強の脚長差がある状態で生活していれば、それが原因となって骨盤や骨格の歪みが生じていたとしても当然の事でしょう。ギッタンバッコンしちゃいますからね。

 

 

実際に骨格の状態を調べてみると、やはり骨盤と腰椎との間で歪みが確認されました。 

 

治療の優先順位を調べると「最優先」と出たので、骨盤ブロックを使用して矯正治療を行いながら、他の問題に対する診断を進めます。 

構造的な問題がある事が確認されたので、次に栄養などの科学的な問題について調べていきます。

 

 

右下肢の痛み・疲労感以外になにか自覚症状はあるか確認したところ、

「からだがとにかく疲れるんですよー」との事。

 

となると、左下肢という部分的な問題だけではなく、身体全体の問題も関係しているケースが考えられます。

 

 

なので、とりあえず適当に調べてみると、ミトコンドリア「乳酸」で弱さが現れました。  

 

これはつまりどういう事か?というと…。

 

 

毎日の食事で、エネルギーを作るための栄養素(三大栄養素)を摂取した場合、その栄養素がそのままエネルギーとして使われるわけではありません

 

まず初めに、身体の細胞内における「解糖系」という回路において、ブドウ糖」などの栄養素を「ピルビン酸」に変換し、さらにその「ピルビン酸」を、酸素が十分に供給されている状況において「アセチルCoA」に変換した上で、細胞内のミトコンドリア」における「クエン酸回路」・「電子伝達系」において「アセチルCoA」を「ATP」という生命エネルギーに変換することによって初めて、身体の中でエネルギーとして使うことができるのです。

 

つまり、その生命エネルギーへの変換が行われる場所というのが、おもに細胞内のミトコンドリアという場所なのです。

 

 

その「生命エネルギーの製造工場」と言えるミトコンドリアにおいて、何かしらの不具合が生じてしまった場合、「栄養素は足りているのにATPは生成されない」という状態になってしまうために、結果的に、身体は「エネルギー不足」の状態に陥ってしまうわけです。

 

そして、その「何かしらの不具合」を引き起こす原因の一つに「糖質の過剰摂取」があります。

 

 

ブドウ糖」の原料となる「糖質」を過剰に摂取する事によって、大量に生成されるブドウ糖」を「解糖系」において処理しきれない状態になってしまいます。

 

その結果、本来であればブドウ糖」から「ピルビン酸」を経て「アセチルCoA」が生成されるはずが、「乳酸」という別の物質が大量に生成され、細胞内に過剰に蓄積されてしまうのです。

 

 

ある程度の量の「乳酸」であれば、細胞等において代謝させる事も十分可能ですが、処理しきれないほどの量の「乳酸」が蓄積してしまった場合には、その影響によって細胞自体が機能不全を起こしてしまいます。

 

また、「解糖系」において「アセチルCoA」が生成されなくなるのですから、当然、その先のミトコンドリア」において「ATP」を生成するという事も出来なくなってしまいます

 

 

その結果、「エネルギー不足」「乳酸の蓄積による筋疲労と身体の酸性化」などの問題が起きてしまうのです。

 

 

そのようなミトコンドリア機能不全」という問題。

 

「単純な疲労状態」を引き起こすだけではなく、場合によっては「ガン」などの様々な病気を引き起こす大きな原因となる可能性まで指摘されています。

 

 

つまり、Kさんの身体においても、そういったミトコンドリア「乳酸」による問題が起きているのだと思われます。

 

 

そのような問題に関して、症状を訴えている下腿の筋への影響についても調べると、やはり、局所的な「ミトコンドリア」と「乳酸」の問題が確認されました。

 

そこで、何となくKさんに、ここ最近の食生活について質問すると、

「節約のためにすき家で牛丼ばっかり食べてました」との話(笑)。

 

 

念のため、さらに「ミトコンドリア」の問題を掘り下げて調べてみると…。

 

案の定、「ビタミン・ミネラルの欠乏」の問題も関連している事が確認。

 

 

やっぱり食事って大事ですよねー。でも…。

 

残念ながら、ほとんどの人は普段の生活でそういった関連に気付く事はありません…。

 

「なんか調子悪い…」

「でも何でか分かんない…」

 

「大したことないだろう」と後回しにした結果、「大きな病気や問題」が起きて初めて気が付く。そんなもんです。

 

 

さて、その他にも、慣れない革靴での営業の仕事による下腿の筋疲労や、また、転職による環境の変化やストレスなどの影響によって副腎疲労が引き起こされ、関連する下肢の筋における筋力低下の問題なども見受けられました。

 

これらの問題も影響して、「下腿の血液循環の悪い状態」を引き起こし、「局所的な酸素欠乏状態」を引き起こすことによって、 結果として、下腿の筋における「ATPが生成されないエネルギー不足の状態」「過剰に蓄積した乳酸による筋疲労の状態」を作り出してしまうのです。

 

 

ひとまずそこまで原因が分かれば、あとは診断結果をもとに治療するだけです。

 

診断している間に、右のふくらはぎの苦しさはかなり軽減していた、との事なので、これについては、最初に行っていた「骨盤と腰椎の歪みに対する矯正」と、「血液循環改善のためのホットパックによる温熱療法」による効果だと思われます。

 

 

その後、前述した診断結果をもとに治療。

 

治療を終えて帰る頃には、何の問題も無かったようなスッキリとした表情で帰られました。

 

 

 

とりあえず初回の治療としては、うまくいったように思います。

しかし、今の状態のままでは、遅かれ早かれ症状が再発する事になる可能性は高いと思われます。

 

 

それはなぜか?

 

理由は、「3㎝強の脚長差」「扁平足」です。

 

 

この二つの問題に共通する事。

それは「ほっとけばそのうち治る問題ではない」という事です。

 

これらの問題を放置する事によって、問題がさらに深刻化する事はあっても、自然と改善する事はまずありません

 

 

そういった構造的な問題への対策について真剣に取り組まなければ、問題は何度でも繰り返され、結果、症状は再発するでしょう。

 

 

とりあえず、Kさんには治療後、栄養バランスの問題の予防のために、ビタミン・ミネラルなどのサプリメントの必要な種類と所要量の指導を行い、併せて、扁平足を予防するための既製品のインソールを使用する事をアドバイスしました。

 

「エネルギー不足」の問題や、「過剰な乳酸の蓄積による筋疲労」の問題については、「普段の食生活における栄養バランスの改善」という対策が必要不可欠となるでしょう。

 

また、「3㎝強の脚長差」という構造的な問題を考えた場合、「既製品のインソール」ではその問題に対応する事ができないため、必然的に「オーダーメイドのオルソティック」を処方するのが適切だと思いましたが、今回は患者さんの希望に従い、さしあたり「既製品のインソール」で様子を見る事にしました。

 

 

しかしながら、果たしてそれでどこまで症状を予防する事ができるか…。

 

 

お金と時間が無限に有るのであれば、自分の健康を守る事に対していくらでも使うことができます。

 

三万円以上するオーダーメイドのオルソティックや、栄養状態を改善するための適切な食事・サプリメント、あるいは症状を改善するための治療にかかる施術料など…。

 

そういった事にお金と時間を使う事さえできれば、問題はいくらでも解決します。

 

 

ですが、現実的にはなかなかそう思い通りにできるとは限りません。

 

限られたお金と時間の範囲内で、なんとかやりくりをしながら生活している場合、どうしても後回しにせざるを得ないものが出てきます。

 

 

ただし、それは本当に後回しにしてもいいものなのでしょうか?

 

むしろ優先的に対処する事によって、長い目で見た場合、より少ない負担と労力で対処することができるのかもしれません。

 

 

えてして問題というのは、先送りにしたり後回しにする事によって、結果的に問題を大きくしてしまう、といった事がよくあります。

 

「健康に関する問題」というのは、まさにその最たるものなのではないでしょうか?

 

 

仕事も大事、生活も大事、お金も大事。でも、健康も大事です。

そして、健康なら仕事をしてお金を稼ぐ事もできますが、お金で健康は買えません。

 

 

そう考えた場合、何が一番大事なことなのか?

 

 

病気やケガをすることによって患者さんが問われている事とは、結局そういう事なのかもしれません。

 

 

そして、「そのような経験が意味するもの」とは、大病を患ってしまう前の、あるいは大病を予防するための「予行演習」のようなもの、なのかもしれません。